☆コロナ(COVID-19)ワクチン(主にmRNA)の機序でわかっている事(2021.1現在)☆

 『一般社団方針日本感染症学会 ワクチン委員会のCOVID-19 ワクチンに関する提言(第1版)』についての資料を自分の頭で整理するためにまとめました。

 1.現在の開発されているワクチン(主な三社)

企業/アカデミア:ワクチンの種類

ファイザー/ビオンテック(米独):mRNA

モデルナ(米):mRNA

アストラゼネカ/オックスフォード(英):ウイルスベクター

※いずれも筋肉注射で21日から28日の間隔で2回接種臨床試験を実施。

 

2.ワクチンの作用機序

1.mRNAワクチン

mRNA自身は人体や環境中のRNA分解酵素で簡単に破壊されやすい

           ↓なので

脂質ナノ粒子(LNP:lipid nanoparticle)で包んでカプセル化して分解を防いでいる

           +

LNPによって人の細胞内にmRNAが取り込まれやすくなっている。

 

投与後筋肉細胞や樹状細胞内でmRNAの情報をもとにたんぱく質が作られる。

           ↓

生成されたたんぱく質の一部がリンパ球に提示され、免疫応答が起こる。

           +

mRNA自身も自然免疫を刺激する働きもあり、免疫誘導を促進する。

 ※mRNAワクチンの臨床試験はすでにHIV感染症や各種のがんワクチンなどでも行われていたが、ヒトに実用化されるのは今回が初めて。

 

2.ウイルスベクターワクチン

アデノウイルスなど感染力のあるウイルスに特定の遺伝子を組み込みに投与する。

mRNAワクチンと同様、ヒトの細胞内で遺伝子からたんぱく質が合成され、免疫応答が起こる。

アストラゼネカのものはベクターSARS-CoV-2のスパイクたんぱく質の遺伝子を組み込んであり、スパイクたんぱく質に対する免疫が誘導される。

 ※先天性の代謝疾患やがんの治療に応用されている。感染領域でもエボラ出血熱のワクチンとして海外で実用化されている。

 

3.ワクチンの安全性

1.有害事象と副反応

局所反応

mRNAワクチン

・疼痛頻度が70~80%と高い。

ファイザーのワクチンでは日常生活に支障が出る中等度以上の疼痛が報告されている。

(1回目:約30%、2回目:約15%)

※参考:不活化インフルエンザワクチン接種時の疼痛頻度10~22%

ウイルスベクターワクチン

・若年者群で疼痛の頻度が高くなっている。

 

全身反応

mRNAワクチン

・倦怠感、頭痛、寒気、吐気・嘔吐、筋肉痛(ただし、対象群でもある程度みられる)

・発熱(38度以上)は1回目の接種では少ないが、2回目の接種後に10~17%みられる。特に高齢者よりも若年群で頻度が高い傾向。

※参考:不活化インフルエンザワクチンの発熱頻度は1~2%

ウイルスベクターワクチン

アストラゼネカのワクチンの接種後の発熱は、18歳~55歳群の1回目で24.5%あった以外はみられない。

 

4.国内での接種の方向性

1)優先接種対象者

・医療関係者、高齢者、基礎疾患を有する方を優先する

・高齢者等が入所・居住する社会福祉施設等において、利用者に直接接する職員も高齢者に次ぐ接種順位にする事を協議

 2)基礎疾患について

・慢性呼吸器疾患

・慢性心疾患

・慢性腎疾患

・慢性肝疾患

・神経疾患・神経筋疾患

・血液疾患

・糖尿病

・疾患や治療に伴う免疫抑制状態(悪性腫瘍、関節リウマチ・膠原病、肥満を含む内分泌疾患、消火器疾患、HIV感染症など)

 ※新型インフルエンザワクチン優先接種の対象とする基礎疾患の基準 手引に記載されているもので検討されている。

 3)個別の疾患について

気管支喘息疾患

COVID-19にかかりにくいという報告はあるが、米国CDCは中等度から重度の気管支喘息をリスクとなる可能性のある疾患に挙げている。希望する場合は中等度から重度に限って優先接種対象者に含めてもよいと考えられている。

高血圧

COVID-19重症化のリスク因子とされているが、他の心疾患や糖尿病、慢性腎疾患などの複合的な結果が理由。

65歳未満では高血圧自体が明確なリスク因子であるとは限らないので、優先接種の対象には含める必要はないと考えられている。

肥満(BMI30以上)

COVID-19重症化のリスク因子であり、とくに60歳未満では重症化との関連が高いという報告があるので、接種が奨められる。

妊婦

「妊婦への安全性」が確認されていない為、現時点では優先接種対象者に含める事はできないと考えられている。

小児

COVID-19ワクチンの臨床試験は実施されておらず、安全性が確認されていないため、対象には含まれないと考えられている。

 

5.接種体制

・高齢者や基礎疾患のある方の接種は、市町村からの文書(接種クーポン)などによる通知が計画されている。

・COVID-19ワクチンは筋肉内注射で投与。

・保管方法:

ファイザー→マイナス60~80℃の冷蔵庫が必要。輸送にもドライアイスを用いる。

モデルナ→長期の保管にはマイナス15~25℃の冷蔵庫が必要。

アストラゼネカ→これまでのワクチンと同様に冷蔵保管。

 

以上が現在わかっている事です。今後いろいろな情報が出てくると思うのでその都度整理していきたいと思いますので、よかったら参考にしてみてください。